このサイトは茶碗や骨董品に詳しい方だけでなく、これから曜変天目に興味を持った人、織田信長の歴史に興味がある人といった初めて茶碗を見る方にも楽しんでいただくためにサイトを作成しております。
メインページである「遂に発見か、 信長が愛した曜変天目茶碗」では、メインである茶碗について説明をさせていただいておりますが、専門用語がわかりにくいという声があったので、茶碗、特に天目茶碗を楽しんでいただくための用語集を作りました。
こちらのページを参考いただきながらサイトを楽しんでいただければと存じます。
※こちらのページは茶碗に詳しくない方へ向けたコンテンツであり、あえてわかりやすい言葉を使用させていただいております。
目次
特によく使う用語
天目
宋代の建窯で作られた喫茶用茶碗のこと。天目という呼び方は日本独特のもので、中国浙江省北西部にある天目山にある寺院へ留学していた日本人僧が、使われていた喫茶用の茶碗をそう呼んだことが由来とされます。
中国では建盞(建盞)と呼ばれます。
宋・南宋・北宋(そう・なんそう・ほくそう)
中国の王朝の一つ。西暦では960年から1279年となり、日本では平安時代から鎌倉時代にあたります。
1127年以前を北宋、それ以降を南宋と呼び分けています。
天目茶碗はこの時代に製作されました。
国宝の曜変天目はすべて南宋に作られたものとされています。
釉薬(ゆうやく・うわぐすり)
陶磁器にかける液体(薬品)のことです。主な原料は草木の灰と砕いた土石類を水で溶いたものとなります。
釉薬をかけて焼くことでガラス化し、水分などに強い陶磁器となります。また、デザインも兼ねており、釉薬に混ぜる金属が熱で化学反応を起こすことで様々な色となります。その時代によって様々な釉薬が使用され曜変天目などの天目茶碗は黒釉(こくゆう)の釉薬を多く使用していました。
黒釉(こくゆう)
焼いた時に黒くなる釉薬をつけた茶碗のことをいいます。
黒釉という言葉自体は色を示す言葉として使われ、その名前そのものの釉薬があるわけではありません。(〇〇黒釉と名乗る釉薬はあります。)
正確には、鉄を多く含んだ釉薬が焼成で変色する「鉄釉(てつゆう)」の一部であり、焼成の際に黒く変色するものを黒釉と言いました。
鉄釉には他にも茶色や灰色に変色するものもございます。
その中で曜変天目や油滴天目などの天目茶碗に使われた真っ黒になる釉薬は「天目釉(てんもくゆう)」ともいいます。
中国では漢の時代に越州窯で使用され始めました。
釉調(ゆうちょう)
釉薬を焼成した際にでる、釉薬の見栄え。同じ釉薬を使っても焼き方、窯、外環などににより違った見栄えとなることもある。
高台(こうだい)
茶碗の土台のことを指します。釉薬をかけない土が見えるものが多いですが、釉薬を掛けるものも一部ございます。高台は釉薬がかかっていないことが多く、素地が見えるため土や形、大小によりどの時代茶碗かを判断する一つの基準となります。
高台の内側(底)を「高台内」と言い、高台が畳と接する部分を「畳付き」と言います。
貫入(かんにゅう)
釉薬の表面に入る細かいひび割れのこと。焼成の際に溶けてガラス質となった釉薬が、冷めた時に素地の膨張と差ができるため、割れてヒビとなります。特に青磁ではこのヒビの美しさが茶碗鑑賞の楽しみの一つとされますが、黒釉の天目茶碗ではあまり語られません。釉薬の種類を判断する一つとなります。
写真は青磁の貫入です。
かせ
釉薬の表面が艶がない状態のこと。元々、艶のないものもあれば時間と共に光沢感のなくなるものもある。このかせ方により古いものか新しいものかの判断をすることもある。
古い時代と謳っているのに明らかに光沢のある茶碗は、現代物の偽物と考えて良いです。
建窯(けんよう)
中国、福建省建陽県水吉鎮のあたりにあった窯(かま)のことです。宋代に主に喫茶用の陶磁器を作成し、曜変天目を含む多くの天目茶碗はこちらで生産されております。
建盞 (けんさん)
上記、建窯で焼かれた茶碗のこと。「盞」は小さい茶碗という意味です。日本における「天目」となります。釉色により兎毫盞 (とごうさん) 、鷓鴣斑 (しゃこまだら) 、烏盞 (うさん)とも呼ばれています。
陶磁器の基礎用語
陶磁器(とうじき)
やきもの全般のことを指します。また、陶器と磁器を併せて陶磁器と呼びます。
陶器(とうき)
陶土と呼ばれる粘土が原材料で、素地が茶色や灰色など暗い色であり、光にかざしても透けません。
釉薬は多色の色があり、その時代や原産地によって変わります。
素地が厚く、指で弾いても鈍い音がします。
陶器は「土もの」と呼ばれております。
磁器(じき)
ケイ酸分を主成分とした陶石などの岩石を細かく砕いた粉が原料になり、素地が白く、光にかざすと透けます。
釉薬は透明か青色の物がほとんどで、見た目がすっきりしたものが多いです。
素地が比較的薄く、指で弾くとキーンと高い音が鳴ります。
磁器は「石もの」とも呼ばれております。
窯変(ようへん)
焼成中に窯の中の状態は完全にコントロールはできず、灰の飛び散り、炎の具合、温度の変化など予想通りにいきません。
それにより、素地や釉薬が思いがけない変化をし、模様や仕上がりが変わることを窯変と言います。
曜変天目の言葉の由来の一つとなっています。
「火変わり」ともいいます。
呈色(ていしょく)
発色、変色を伴う化学反応のことを言います。陶磁器の場合は釉薬に含まれた成分(金属や顔料)が焼成の際に熱で変化することを指します。
上記の窯変と似ていますが、呈色反応はある程度一定の結果となる必然性のある反応なのに対し、窯変は偶然の要素が多い反応となります。
素地(そじ)
焼成前の成形の済んだ粘土や陶土のこと。
器胎(きたい)
陶磁器の陶土の部分のこと。胎ともいう。
器胎と釉薬を合わせて胎釉と言ったりもします。
匣鉢(こうばち・さや)
陶磁器を焼く時に、素地に火が直接触れることや飛散物から保護するために装着します。
時代により形状が変わり、北宋では漏斗状の匣鉢に一つずつ入れ焼いていました。
茶碗の各部名称
口縁部(こうえんぶ)・口造り(くちづくり)
口が触れる部分で、喫茶用の茶碗にとって、お茶の飲みやすさ、口当たりに大きく影響する為とても重要になります。
また、反りの角度により茶碗を傾ける角度なども変わってきます。
天目は外側に反っている「端反り(はたぞり)」となります。逆に内側に反っている「姥口(うばぐち)」という形もございます。
他にも「玉縁(たまぶち)」「直口(すぐぐち)」「樋口(とゆぐち)」「蛤口(はまぐりくち)」
胴(どう)
口辺り下から腰までの部分をいいます。茶碗全体の形はこの胴の形が決め、腰と合わせ茶碗の持ちやすさにも影響いたします。
腰(こし)
胴から高台脇へと曲がっている部分のことを言います。
高台脇(こうだいわき)
腰から高台の際までの高台周辺部分のことを言います。
高台
上にも書いた通り、茶碗の土台です。
見込(みこみ)
茶碗の内側全面のことを見込みと言います。されに見込みはお茶の作法において細かく分類がされており、茶巾摺、茶筅摺、茶溜まり、と別れます。
この言葉は作法を用いる日本ならではの言葉と言ってもいいと思います。
茶巾摺(ちゃきんずれ・ちゃきんずり)
お茶の作法として、茶巾で茶碗を清める(拭く)作法がございます。その際に親指が触れる場所を茶巾摺と言います。
茶筅摺(ちゃせんずれ・ちゃせんずり)
お茶を立てる際に茶筅の当たる部分です。茶巾摺と茶溜りの間になります。
茶溜り(ちゃだまり)
茶碗の底の真ん中の、丸みを帯びた凹みのことです。その名の通り、ここに茶が流れて溜まります。
覆輪
口縁部に付けられた金属製の輪のことです。補強の目的の他、装飾としても付けられています。また、飲んだ時の口触りをよくする目的もございます。色は金、銀が主流です。
酸化焼成(OF)
窯の中の空気中に一定量の酸素がある状態で焼成をすること。
土や釉薬に含まれている金属の成分と空気中の酸素と結合することで化学反応が起こります。
現代の電気釜では炎やガスが発生しないので一般的に酸化焼成になります。
還元焼成(RF)
反対に窯の中の酸素不足にして焼成すること。
物が燃えるために必要な酸素が窯の中に少ないので、その分を土や釉薬から奪っていき化学反応を起こします。
酸化焼成とは違った化学反応のため、焼成時の色などが変わります。
たとえば、銅の釉薬は酸化焼成では緑だが、還元焼成では赤になります。
天目茶碗の種類
曜変天目
建窯で焼かれた建盞の一つ。黒の釉薬の表面に気泡が破裂した際にできる斑紋があり、光を当てることにより青や紫色のに輝く。中国には現存するものは無く、日本に国宝の3点があるのみです。
詳しくは>>曜変天目の基礎知識
油滴天目(ゆてきてんもく)
建窯で焼かれた建盞の一つ。黒の釉薬の表面に「水面に浮かべた油の滴」のような銀や金色の斑紋が見えるものことから油滴天目といいます。模様は釉薬に多く含まれる鉄分が釉の表面で細かい気泡となり破裂したのちに結晶化したことによりできています。
詳しくは>>禾目天目・油滴天目・曜変天目の違いと特徴
禾目天目(のぎめてんもく)
建窯で焼かれた建盞の一つ。黒の釉薬の表面に茶色や銀色のように細かい細い縦筋が見えます。これが稲穂の先の芒(のぎ)に見えることから、「禾(のぎ)」の漢字を当て禾目天目といいます。模様は黒釉中の鉄分が焼成時に溶けて下に流れ縦筋になることでできます。中国では兎毫盞と言われています。
詳しくは>>禾目天目・油滴天目・曜変天目の違いと特徴
灰被天目(はいかつぎてんもく)
文字通り灰を被ったような艶のない釉調をしている茶碗。釉薬を二重掛けしていることが多く、それにより変化する釉調が美しい茶碗です。
毫変盞(ごうへんさん)
中国の建窯にて焼かれた天目茶碗で、北宋の「茶録」には「その価は甚だ高く且つ得ることができない」と記されていた幻の陶磁器のこと。その姿はわからないが、記述や名前から禾目天目(兎毫盞)の珍しいものと考えられる。
詳しくは>>毫変盞(ごうへんさん)とは
茶碗の形
天目茶碗
茶碗の形もいろいろあり、おおよそその時代で形が決まっています。
曜変天目や油滴天目、白天目は天目形とされています。
天目形の特徴は
・高台が低く小さい
・高台は土見せしている(釉薬が塗っていない)
・形状が漏斗状に開いている
・底から口縁部にかけて一旦すぼまり、そこからさらに外に沿っている
という形状を指します。
資料・人物・施設
君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)
室町時代の足利義政東山御殿の内装に関して記録した伝書。中国画、茶陶などの美術工芸史、茶華香道の基礎などが記載されています。写本や刊本などの複製はあるが原本はありません。国立国会図書館デジタルコレクションでいくつか読むことができます。
建窯瓷(けんようじ)
葉文程・林忠幹氏が執筆した中国の陶瓷書。「瓷」は日本では「磁」の漢字を使います。中国語で「かたく焼かれたきめが細かい焼き物」の意味を指します。著者本人が発掘調査に携わっている貴重な本です。日本においては富田哲雄氏が翻訳し、二玄社より発刊されています。
静嘉堂文庫(せいかどうぶんこ)
東京世田谷区にある美術館。国宝、重要文化財を含む数多くの古美術品を所蔵しており、3点しなかい国宝である曜変天目の1つを所蔵しています。おそらくこの曜変天目が一番有名です。静嘉堂文庫美術館とも言います。
大徳寺龍光院(だいとくじりゅうこういん)
京都にある寺院。3点しなかい国宝である曜変天目の1つを所蔵しているが、唯一美術館ではないため見れる機会が少なく希少です。
藤田美術館(ふじたびじゅつかん)
大阪にある美術館。多くの茶道具を所蔵しており、3点しなかい国宝である曜変天目の1つを所蔵しています。